尾瀬日記 2007

                       
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■2007.4.28〜30 (大清水〜尾瀬沼〜見晴〜尾瀬ヶ原〜至仏山〜鳩待峠)

 今冬は異常なくらいの暖冬で全国的に雪も少なく尾瀬も例外ではなかった。そのため尾瀬に通じる道路の冬季閉鎖が1週間も早まった。4月に入り,エルニーニョがおさまると,今度は暫く低温傾向が続いた。連休が近づくにつれ,雪は少なくても雪解けはペースダウンしたかななどと尾瀬の地が気になりだした。

4月28日(午前:くもり時々晴れ,午後:雪)
時ならぬ雪に覆われた大清水湿原  好天なら夜のうちに出発するか・・・と考えたが,予報は余り良くなく早朝に家を出発した。月が煌々と辺りを照らし出していた昨夜とは様子が一変,薄雲が空を覆っていた。雨が降り出す前に尾瀬につきたいと思いを走らせていると,いろは坂を昇る頃から雨が降り出し,戦場ヶ原では本格的な雪になった。それでは尾瀬も・・・と期待は高まるが,その前に問題発生である。今シーズンはもう使わないと思い,既にスタッドレスタイヤは外していたのだ。まあ,四駆だし何とかなるかと金精峠越えに挑むが何度かヒヤリとする場面があった。大きな事故に至らずよかったと胸をなで下ろす。鎌田は雨,戸倉では雪が降っていた。この僅かな高度の違いが雪と雨の境界のようだ。「冬のソナタ」のような雪化粧した風景の中を車を走らせ,何とか大清水に着いた。
 身支度を整え気になる大清水湿原に向かう。いつもならミズバショウがかなり咲き出しているはずだが・・・雪を被ったミズバショウも綺麗だろうなと真っ白になった木道を歩いていると,木道の傍らには少し小振りだがミズバショウがたくさん咲いていた。寒さでやられたのだろうか,苞が茶色に変色しているものがほとんどだ。撮影を済ませて,尾瀬沼に向かおうとザックを置いた所に向かうと目の前にいきなりJUNさん登場。 まさかここで会うとは思っていなかったので,本当に驚いた。いろいろ話をしていると,コースや山小屋までほぼ一緒のようだ。てばまるさんやkazuさん達も入山しているし何かと心強い。

池塘も冬に逆戻り・・・ 猛吹雪  JUNさんはバスで到着したばかりだったので,一足先に尾瀬沼に向かった。雪が上がると,霧が立ちこめてきた。幻想的な光景に思わず荷物を置きじっくりと撮影を始めた。それもつかの間であっという間に霧も上がり,一ノ瀬に着く頃には青空が広がりだした。
 久しぶりの山歩きで足が重い。一ノ瀬で大休止してゆっくりと尾瀬沼を目指す。ちょうど橋の袂で追い越していったJUNさんも休んでいた。そこからは雪も増えるが,場所を選ばないと踏み抜いてしまう。一ノ瀬からは一時間ほどで岩清水に到着。雪の下だろうと諦めていた岩清水は雪の間に顔を出していたので,冷たい水を補給し喉を潤した。ここからさらに勾配がきつくなる。撮影するために休むのか,休むために撮影するのか・・・相変わらずペースは上がらない。束の間の晴れ間も去り薄い雲が空を覆っていたが,三平峠に到着する頃にはちらちらと雪が舞いだした。しかもいきなり雷が轟く。ひぇ〜,雪なら我慢もできるが雷ばかりはどうも。先を急がねば・・・。

吹き荒れる  初めはちらちら降っていた雪も徐々にその勢いを増す。いつもの場所から尾瀬沼や大江湿原を見下ろすが,雪の降り方が激しくあまりよく見えない。四月だというのに真冬並の降り方だ。三平下に着いても売店の戸は固く閉ざされいつもの賑わいはなかった。こんな天候では入山してくる人も少ないだろうな・・・。ここで尾瀬沼の上は歩いて渡るべきかどうか考えた。今年はいつもより雪も少ないし尾瀬沼歩きは無理だろうと思っていたが,以外に雪は豊富で尾瀬沼も真っ白だ。いつもなら雪や氷の溶け具合を見ながら沼の上を歩くのだが,真っ白な雪に覆われてそれを確認できない。ここで無理をする意味はないし,無理は禁物と周辺部を歩くことにした。ここで落ちても誰にも気付いてもらえないだろう・・・。
 沼の上は風も強く,完全な吹雪だ。目を開けていることも困難な状態である。近くにある木々も風上側の幹には雪が吹き付け真っ白なクリスマスツリーのようだ。こんなにすごい降り方は久しぶりだ。ただ雨とは違って,衣服が濡れないのはいい。防風・防寒対策さえしっかりしていればそれほど気にすることもない。寧ろ滅多にない経験と一層撮影意欲が湧く。春に来て真冬並みの撮影が出来るなんてラッキーだ。カメラをセットするが,こんな状況下ではレンズ交換さえままならない。悪戦苦闘しながら数枚撮影して,長蔵小屋にチェックインした。
 部屋は25番。2段ベットが二つある部屋だがまわりを雪に囲まれているため非常に寒い。長蔵小屋の宿泊客は連休初日としては少なめの40〜50人程度だった。半年ぶりの長蔵小屋の風呂で冷えた体を温め,8時には早々と休んだ。
  【コース・時間】
大清水湿原(9:00〜9:30)〜大清水(9:30)〜一ノ瀬(10:50〜11:20)〜岩清水(12:20)〜三平峠(13:20)〜長蔵小屋(15:30)(長蔵小屋泊)

4月29日(快晴)
黎明 新雪で覆われた沼  長蔵小屋に泊まると撮影ポイントが近くですむため,起床時間も比較的ゆっくり出来る。それでも朝早いカメラマンの物音で目が覚めた。というより,十分睡眠を取ったと言うことか・・・外の様子が気になり,窓から外を覗うと雲一つ無い完璧な空が広がっていた。急いで荷物を纏めて外に出た。まずは定番ポイントに向かうと,ちょうどJUNさんも元長蔵小屋辺りで撮影ポイントを探していた。いろいろ話していると,燧ヶ岳がピンク色に染まりだした。こうしてはいられないと,二人で船着き場近くにカメラをセットして撮影を始めた。昨日はいったん雪が上がった後も,夕食の頃はまた盛んに降っていたので,その雪のお陰で尾瀬沼は真冬の様相だ。残雪を覆い隠す新雪が美しい・・・。オレンジ色の光はだんだんその色を失いながら徐々に沼に降りてきた。その光が沼に降り注ぐと,昨夜降り積もった真新しい雪の一粒一粒が宝石のように輝く。手前からずっと先の方まで宝石箱をひっくり返したように一斉に輝き光を放つ。この煌めく夢のような道をまさかこの時期に見れるとは思わなかった。この光景をしっかり胸に刻み,この場に立っていられることを深く感謝した。 この美しさの一端でもなんとか写真に残したくてあちこち歩き回るが,氷も薄くかなり不安だ。事実足を乗せるとズブズブ・・・と足を取られたり,ミシミシと氷が割れるような大きな音を立てたりと,ドキリとさせられる場面が何度もあった。昨日は風が強かったため木に降り積もった雪は吹き飛ばされ,思ったほど木に雪は着いていないが,こんな新雪の光景を撮影しようと時間を忘れて歩き回った。ふと気付くと6時・・・では何とか記念撮影をと思いライブカメラに向かう。しかし,時計があっていなかったため前回に引き続き失敗してしまった。次こそは・・・。

日笠も美しい・・・ 沼の煌めき  撮影も一段落したので腹ごしらえである。朝の撮影に備えて朝弁当を頼んでおいたのだが,出来たら小屋でと思い長蔵小屋の談話室で朝弁当の包みを開く。宿泊客はちょうど朝食の時間で談話室は貸しきり状態だ。相変わらず水分の少ないおにぎりだが暖かいストーブの傍でゆっくりと食べる朝食も悪くはない。そこへ,JUNさんも来てくれたので暫く話をしてから長蔵小屋を後にした。ちょうど太郎さんも来ていたので今年初めての挨拶を交わす。今日の道中も長いのですぐに山の鼻に向かおうかとも思ったけれど,この綺麗な雪原を前にして山の鼻に向かうのはなんとも勿体ない。あちこちで撮影しながらゆっくりと大江湿原を散策してから,夏道通りに沼尻を目指した。
 でも,思ったより氷も溶けていないようなので途中から沼の上を最短距離で沼尻を目指した。昨日の雪で誰のトレースもなかったのでかなり不安ではあったけれど,危険なところはなかった。ぼくが沼の上を歩き出すと,数人がトレースを辿ってついてきた。沼尻に着くと5〜6人が休憩していたが,そのまま休みをとらず白砂湿原を目指した。途中の沼尻蕎麦屋は今年も休みらしく雪の中でひっそりしていた。峠を越えると急な下りが続く。かなりあちこち溶けていて木道が出ていたり,薮が道を塞いでいたりして非常に歩きにくい。しかも登山道の南側は切れ落ちているため足を踏み外すと,そのまま沼尻川にダイブしそうである。見晴に着く頃が傾斜も緩く,同じような風景が長く続くため退屈な道であるがやっと見晴に着いた。

長沢のミズバショウはチラホラ咲き出していました  今年も檜枝岐小屋が開いていたのでいつものように喫茶「ひげくま」で山菜蕎麦と甘酒を注文した。甘酒は品切れだったが,蕎麦は美味しかった。朝も早かったし,満腹になったので小屋の前のベンチで横になっていると,長閑に流れるラジオの音楽とポカポカの陽気にいつの間にか眠ってしまった。尾瀬に来る時間で一番楽しみにしているのは実はこういう時間なのだ。
 ふと目を覚ますと既に1時半だ。そろそろ出発するかと重いザックを担ぎ上げ,弥四郎清水まで行って水を補給しようとすると,目の前に黄色の防寒着を着たshinさんが現れた。次いでkazuさんの奥さん,kazuさんと続けて懐かしい顔に出会った。3人は見晴で待てば,尾瀬病患者に会えるだろうと弥四郎小屋の前で1時間近く話しながら待っていてくれたそうだ。昼寝をしていなければもっと早く会えたのに残念だった。暫くぶりの再開に話は弾んだが,先が長い上,時間もそれほど余裕がないので後ろ髪を引かれる思いで見晴を後にした。弥四郎小屋に泊まるというkazuさん夫妻に見送られ,まずは龍宮小屋に泊まるshinさんと龍宮に向かった。龍宮小屋では小屋主さんとこちらも半年ぶりの再会である。美味しいコーヒーを戴きながら尾瀬のことや写真のことなどを話題に暫く話し込んでしまった。のんびりしたい気持ちもあるが,今日は山の鼻小屋を予約しているので先を急ぐ。shinさんには長沢のミズバショウの様子を確認したり,龍宮の様子を見たりしながら下田代までお付き合いいただいた。
 日もだんだん落ちてきた。途中雪が面白い模様に溶けていて撮影したい欲求に駆られるが,これ以上遅くすることは出来ない。泣く泣く諦めて山の鼻小屋に着いたのは5時40分。ほぼ予定通りだったが,山の鼻の食事は5時からと知ってまた慌ただしくなった。小屋でボクの到着を待ってくれていたてばまるさんやJUNさんに挨拶をして,スグに夕食をとることにした。二人は夕方の撮影に出かけたため,誰もいない食堂で一人寂しい夕食となる。いつもながらの食べきれない量の食事を済ませ,これまた貸し切りとなった浴槽に浸かって一日の行動を思い起こした・・・。あ〜極楽,極楽(^^)。雲一つ無い夕方の撮影を諦め,部屋でゆっくりしていると,やがて撮影から戻ったてばまるさんの部屋でJUNさんと3人のミニオフとなった。今回は来ないと聞いていたmeaさんが来ていると聞いたのでそれを伝えるとてばまるさんも驚いていた。色々な話題が出て楽しく時間を過ごしたが,明日のことを考え9時前には解散となった。
【コース・時間】
長蔵小屋(4:40〜7:50)〜沼尻(10:30)〜見晴(12:40〜14:00)〜龍宮(14:30〜15:20)〜山の鼻(17:40)(山の鼻小屋泊)

4月30日(快晴)
夜明け  今回は暫く登っていなかった至仏山に挑戦しようと思っていた。無理でもなんとか森林限界までは登り切って俯瞰写真を撮影したいと考えていたので3時に起床した。荷物をまとめて小屋を後にしようとすると,ちょうど階段からJUNさんが降りてきた。月の沈んだ星空の撮影をするようだ。JUNさんに挨拶をして小屋を後にする。ところがライトが付かない。しかもクマ除けにとつけたラジオもすぐに音が途切れた。昨シーズン終了後に電池を交換するのを忘れたようだ。スグに予備の電池と交換して気を取り直してスタートした。時に3時30分。日が昇る前に何としても森林限界までは登らなくては・・・。
 夜の道は不安だらけだ。残雪期は木道さえ隠れている。過度に期待するのは禁物だが,救いはトレースが残っていること。このトレースが多ければたぶんダイジョウブだろう。でも,至仏山の場合この時期はスキー・ボーダー客がほとんどでルートもあちこちに分散している。まだシーズンも始まったばかりだし少ないだろうと思っていたトレースも思ったよりもたくさんあってそれを辿って登り続ける。まだ,いつもなら寝ている時間なので本調子とはいかないが,ここ2日間の尾瀬歩きで体も少し慣れてきたようだ。少しぐらいではバテない。時折ちらちらと山の鼻の灯りが見える。これも心強い。
会津駒ヶ岳方面を望む  なんとか尾瀬ヶ原と燧ヶ岳が一望できるところまできた。ここまで来ればもう何とか尾瀬ヶ原の俯瞰写真は撮れるだろう。あとは日の出までのどれだけ高度を稼ぐかだ。雪が凍って締まっているので昼間の腐れ雪を歩くよりもずっと歩きやすい。ただ注意を怠ると一気に滑落してしまうので気は抜けない。空に赤みが増してきたのでザックが滑り落ちない場所を見つけて荷物を下ろす。そこでカメラを準備し日の出を待つことにした。でも,眼下はトレースやスキーのシュプールがいっぱいだ。出来るならこれを避けたくてムジナ沢の方にトラバースした。ちょっと雰囲気が変わるがこの方がいい。ついに尾瀬沼の辺りから赤い太陽が顔を覗かせた。太陽の位置に雲があったため,いつもよりやや遅く・・・。初めは真っ赤な弱々しい光だが,時間と共にオレンジ,黄色とその色も強さも変化していく。数枚撮影した後はムジナ沢に向かってみる。見慣れない景色だがこのなだらかな斜面は滑るには絶好の場所だ。いつかスキー板を抱えて登りたいものだ。

笠ヶ岳方面を望む さあ,いくぞ!  ここで,1時間以上も粘ったあと,このまま下るか,山頂を目指すか考え,結局折角だから山頂まで登ることにした。高天が原ももうすぐそこだ。でも本当はそこからがかなり大変だったりする。すぐ近くに見えるのになかなか着かない。なんとか高天が原に着くと,木道がかなり露出していた。休憩ベンチもしっかり出ている。やはりかなり風が強いのだろう。それとも日当たりが良いからかな。いつものペースで撮影を続けていると下から登ってくるスキーヤーがどんどん大きくなる。そのスキーヤーよりは先に山頂に着きたいと最後の一踏ん張りで山頂に着いた。今日の一番乗りとも思ったが既に5〜6人が山頂で寛いでいた。皆スキー客だ。重かった荷物をひとまず下ろし,目の前に広がる大パノラマを堪能する。富士山は見えないが,全く雲のない360度の大パノラマは実に壮観だ。春先の雪の豊富なこの時期の光景は見ていると温かな幸せな気分になれる。ここで山の鼻小屋の朝弁当を食べながら温かなコーヒーを飲む。この温かないつものコーヒーがとても贅沢なものに感じた。

ワル沢上部の大斜面・・・滑りた〜い  思う存分写真も撮れたし,腹ごしらえも出来たし,時間的に余裕もある。あとは気ままにのんびりと春の斜面を降りればいい・・・。滑落しないように気を遣う必要はあるがこんなに素敵な山歩きはこの時期を置いて他にない。長閑に広がる大斜面を目指して鳩待峠から次々とボーダーやらスキーヤーが現れては高みへと消えていく。登り3時間,下り15分だそうである。どうも羨ましい・・・そうそう,そんなこともあろうかと,今回は携帯用のソリを持参していた。他にソリで滑っている人もいないのでちょっと気恥ずかしいが,そんなことは気にしないことにして,適当な斜面を一気に下る。時間短縮にもなるし何より風を切って高速で滑り降りる感覚は爽快だ。ここはどうかななんて尻セード用の適当な斜面を見つけながらの下山となったので,あっという間に鳩待峠に着いてしまった。

山頂を目指して・・・  鳩待峠は相変わらず賑わっていた。さて,アイゼンを外そうと腰を屈め,ふと何気なく山の鼻に向かう道に目を遣るとなんとてばまるさんが登って来るではないか。shinさん,JUNさん,kazuさん夫妻も一緒だ。こんな偶然というものもあるのかと非常に驚いた。時間を示し合わせてもこんなにドンピシャリのタイミングで出逢えることなんてあり得ない・・・尾瀬病患者は不思議な糸でつながっているのか?あまりゆっくりする間もなく,すぐに出ることになった会員制バスに飛び乗り,戸倉まで運んでもらう。ここから大清水まではバスを使おうと思っていたがshinさんの温かい言葉に甘えて大清水まで送っていただいた。その後はてばまるさんやJUNさんshinさんの4人でワタスゲの湯で蕎麦を食べて解散となった。
【コース・時間】
山の鼻小屋(3:15)〜至仏山頂(8:50〜10:20)〜鳩待峠(12:30)




■2007.3.3〜4 (檜枝岐〜御池〜大杉岳〜御池〜檜枝岐)

 檜枝岐のスノーシューツアー。昨年から始まった企画だがとても好評で今年は2回も開催することになった。「ひょっとすると昨年と違うコースを歩けかも知れない」との思いから参加することは即断した。厳冬期の2月の方に参加したかったが,尾瀬仲間のてばまるさんたちの都合を聞いて,3月のほうに参加することになった。募集開始と同時に宿泊先を「山びこ山荘」指定で,てばまるさんに一緒に予約をしてもらった。久しぶりの尾瀬,しかもこんな時期に尾瀬に行く機会などなかなかない。体調を崩さないように注意してその日を待った。

3月3日(晴れのちくもり)
冬の檜枝岐  冬の尾瀬には,長蔵小屋主催の山スキーツアー(尾瀬沼とアヤメ平),ヘリでの空撮,そして昨年の檜枝岐のスノーシューツアーと合計4度訪れている。この時期の尾瀬は掛け値なしに美しい。こんな時期にこんなに素敵な場所で気に入った写真が撮れたらそれに越したことはないが,その地に足を踏み入れることができるだけでも幸せなことである。真っ白な雪原の上を歩く自分を想像しただけで心時めく・・・。
 厳冬期の尾瀬は豪雪地帯に位置しているため晴れる日はほとんどなく,1ヶ月のうちでも数日晴れ間がのぞくだけである。休みが自由に取れるならこの日をねらって訪れることも可能だが,行こうと決めておいた日が晴れることなどほとんどあり得ない。しかし3月ともなると冬型がゆるみ移動性高気圧が通過するようになり晴れる日が多くなる。幸いスノーシューツアーの予定された2日間とも晴れの予報が出ていた。
 てばまるさんと宇都宮駅で合流し檜枝岐に向かう。今回のスノーシューツアーにはHPで知り合ったkazuさんも参加するという。どうも初冬のアヤメ平ですれ違っていたようなのだが,今度はきちんと会って話もできそうなのでそれも楽しみだ。ただ,今回来ると思われていたmeaさんが来れなくなってしまったことは,やはり残念である。他に誰か知り合いが参加しているかな・・・。高速を降りてもほとんど雪は見られない。やはり観測史上類を見ない記録的な暖冬・少雪の影響だ。雪が少ないことはすぐに実感できた。遠くの山並みを真っ白に包んでいるはずの雪は今年はほとんどない。昨年の豪雪を見ているだけに,余計今年は少ないと感じてしまう。高杖スキー場が近くになるにつれ,車道にも少しずつ雪が現れた。春先のような風景を眺めながら快調に車を走らせると,予定よりも少し早く檜枝岐に到着した。山びこ山荘に車を置いて「開山」で昼食をとることにした。「開店中」の案内は出ていたものの店内は,暖房も入っていないし薄暗かった。店内が冷え切っていたので暖かい蕎麦を食べたい気もしたが,やはり蕎麦は「もり」に限る。久しぶりの檜枝岐蕎麦がとても美味しかった。やっと店内が暖まる頃,山びこ山荘まで戻って部屋に荷物を運んだ。2階の「燧ヶ岳」という部屋で,ゆっくりと午後のツアーの準備をしていると,kazuさんから「開山」にいるとの連絡が入った。それにしても僅かな時間差で行き違いになったものだ。そのうち駐車場に車が止まる音がしたので覗き込んでみるとkazuさんのようだ。間もなく上がってきたkazuさんご夫妻と簡単に挨拶を交わした。

展望台への道 kazuさん夫妻,てばまるさんと  今回の集合場所の中土合公園までは目と鼻の先の距離なので道具を持って歩いてゆく。公園には既に何人かの人が集まっていた。集合時刻が近づくにつれ,だんだん人は多くなってきたが,僕たち以外には知り合いはいないようだ。今回は新調したスノーシュー(MSRのライトニングアッセント)を持参した。以前のも軽くてそれほど悪くなかったが,装着が面倒なので今回思い切って新調したのである。kazuさんに使い勝手を聞きながらスノーシュー談義をしているとだんだん参加者も揃ってきた。まず,檜枝岐役場の観光課の方の説明を聞き,いよいよ足慣らしにミニ尾瀬公園内を散策することになった。橋を渡り,明るい林内を歩いていたらツアー参加者が急斜面を指さし,「これを登るらしいよ」と話していた。見るからにすごい急斜面。初めは悪い冗談かと思ったが先頭はやる気満々である。ふと,ストックの先端に目をやると,黒いバスケットが付いていていないことに気づく。しっかりねじ込まなかったため簡単に外れてしまったようだ。途中に落ちているだろうと思い,来た道を引き返すと,すぐに道の途中に埋もれているバスケットを発見,急いでツアーの人達にの隊列に戻る。すると先ほど登り始めた道をみんなが引き返していた。てばまるさんに確認すると,このコースは危険なため展望台に向かうのは中止したようだ。事実,引き返そうとして斜面を滑り落ちてくる人が何人かいた。やはりこの急斜面は初めての人にはきつすぎたようだ。ある意味無謀である。展望台に行かないことになり,ミニ尾瀬公園内をゆっくりと散策した。昨年同様キリンテまで足を伸ばすのかなと思ったが,武田久吉メモリアルホールでUターンしてそのまま中土合公園に戻ってしまった。途中,係の人と歩きながら明日の予定を聞くと,熊沢田代に行くコースも考えていると知り「行くなら当然,熊沢田代のコースだよね〜」と思わぬ展開にみんなの期待が高まる。

燧ヶ岳遠望  初日のスノーシューはこれで終了したが,物足りなさの残る僕たちはやはり展望台まで行ってみようということになった。とりあえず先ほど進んだ道をもう一度進むが,途中からはどこに夏道があるのかさえ分からない。ただ,先行者の足跡もあり,それを辿って行くことにした。
 道なき道を進むがどんどん斜度は増す。柴安ー並の急峻さだ。途中でkazuさんの奥さんが展望台まで行くのをあきらめ途中で引き返したが,残った三人は山岳タイプのスノーシューにものをいわせ,途中滑り落ちそうになりながらも急な壁も何とかよじ登る。何とか峠に到着すると,檜枝岐村が一望できた。真っ白な雪をかぶった檜枝岐。なかなかいい眺めだが,やはり雲が多く眺めが悪いのが残念だ。切れたった尾根を渡って一番上の展望台に行くと燧ヶ岳も一望することができた。晴れていたら申し分ないだろうな。帰りは3人ともスノーシューを外して,下山することにした。ぼくは手ぶらだったのでkazuさんのお世話になり,ザックにくくりつけてもらうことになった。おかげで安心して下山できた。
下山(Photo by てばまる)  山びこ山荘の,温泉の無料利用券を持って「燧の湯」に向かった。すでにkazuさん夫妻も出かけていた。温泉でゆっくり暖まった後は,楽しみにしていた山びこ山荘の夕食だ。自然の素材をふんだんに使い,いろいろ工夫して料理してありとても美味い。山小屋を思えば同じような値段でこれだけいただけるのはありがたいことだ。夕食後はkazuさんご夫妻を部屋に招きミニオフとなった。写真や尾瀬の話題で楽しい時間を過ごすことができた。最後に山びこ山荘内の温泉に浸かってゆっくり休んだ・・・
  【コース・時間】
益子(7:20)〜檜枝岐(11:00)〜中土合公園散策(13:30〜14:50)〜展望台(15:30〜15:45)〜中土合公園(16:00)(山びこ山荘泊)

3月4日(曇りのち快晴)
樹林帯の登り 大杉岳直下を歩く  夕べは満月が時折顔を見せ,今日の晴天を期待させたが,朝からどんよりとした雲が村内を覆っていた。夜は少し雨が降ったようで,道路がしっとりと濡れていた。暖かい朝食をいただいて,出発準備をする。
やまびこ山荘特製の弁当を持って集合場所に向かう。今年は雪が少ないため,集合場所はミニ尾瀬公園の駐車場だ。荷物を車に積み込み,駐車場に着くと,たくさんのスノーモビルがエンジン音を響かせていた。出発準備をしているうちに続々と参加者が集まってきた。ピステンには昨年乗っているので今年は何としてもスノーモビルに乗ってみたかった。近くにいた方にお願いすると,すぐに出発となった。荷物を背負ったままだったので早かったのだろう。走り出すとバイクのように高速で風を切って進む。この爽快感が堪えられない。自分でバイクを運転することはあってもタンデムシートに乗ったことはない。振り落とされないよう手や足に力を加えながら,カーブでは進行方向に体を倒す。自分でハンドルを握りたい欲求に駆られるがここは我慢。いつの日かこの道を自分でスノーモビルを運転してここを走る日が来るかも知れない・・・。スタートが早かったので三番目に御池に着いた。他の人たちもじきに現れるだろうと思って暫く待つが一向に現れる気配はない。小高い丘の上に登り辺りを見回す・・・スノーモビルのエンジン音も聞こえない御池一帯は,静寂に包まれていた。時折,鳥の声が冷えた空気の中を響き渡る。この時期にこの場所に身をおける幸せをしみじみと感じた。20分は待ったろうか。目の前に現れたのはピステンであった。昨年あんなに時間のかかったピステンがこんなに早く着くとは思ってもいなかった。よく見るとkazuさんの奥さんもピステンに乗っているではないか。後から出発したスノーモビルはピストン輸送をするため,てばまるさんやkazuさんたちを途中で下ろし,駐車場で待つ人たちを迎えに向かったという。そこからかなりの距離を歩かされた二人はかなり汗をかき,疲れたようだった。

大杉岳を目指して・・・ 雪深き平が岳  みんなが揃うのを見計らって簡単な説明が行われた。ツアー参加者は総勢25名程度。あとは檜枝岐村役場の方や地元の協力者などを含め総勢35名程度の大所帯となった。今回は上田代に向かうコースと大杉岳に向かうコースの2つに別れるという。上田代コースは広沢田代に向かうということであったが,残念ながら熊沢田代の案は立ち消えになった。至極残念である。是非いつかは実現して欲しいものである。
 参加者は大杉岳に向かう人が約三分の二ぐらいであった。年配から若者まで年齢層や経験もかなり幅があるパーティができあがった。そのためか20分進んでは10分休むぐらいのゆっくりとしたペースで進んだ。山歩きからしばらく遠ざかっている身にはちょうど良いペースだったかも知れない。斜度は昨日の展望台への道を思えばたいしたことはなかった。葉の落ちた明るい広葉樹の森の間から燧ヶ岳や至仏山が時折姿を見せるが山頂まで姿を見せてくれない。しかも視界も余り良くない。いやいや,中止になった前回の人たちの事を思えば,こうして雪の尾瀬を歩けることだけでも感謝しなくては・・・。前回と同じコースなのだが今回の方が何故か疲れる。原因はスノーモビルに不自然な姿勢で乗っていたため,太腿の筋肉が妙に疲れ思うように力が入らないのだ。それでも,ゆっくりしたペースのおかげで前回到着地点に何とかたどり着いた。燧ヶ岳の山頂は相変わらず顔を出してはくれないが,雪をたくさんつけた至仏山や尾瀬ヶ原を見ることが出来た。2年連続でこのような貴重な光景を見ることができたことに感謝したい。
雪に包まれた至仏山  ここで小休止の後,行ける人は大杉岳方面に向かうことになった。もちろん,ぼくらも乗り気だ。kazuさんも行きたいようだったが,今回は奥さんと一緒に残ることになった。20分ほど進んだところで大休止となった。尾瀬ヶ原はよく見えるようになったが見える景色はそれ程変わらない。頂上付近はほとんど見晴らしがないと聞いてそこで昼食となった。しかし,ここまで来たら山頂だけは見たいと思いてばまるさんを誘って山頂に向かう。既に山頂に向かった人が数名いたので,そのトレースを辿る。なんとかそれらしき場所でそこを大杉岳山頂ということにしてそこで下山。5分ほどでみんなが待つ場所に戻り,そこで昼食とした。大きなおにぎりを頬張っていると,檜枝岐役場の方がレギュラーコーヒーを入れてくれた。冬の大杉岳からはやっと山頂が姿を現した至仏山や平ヶ岳が真っ白な雪をつけて春山のように眩しく輝いていた。こんな夢のような場所で飲むコーヒーの味は格別だった。

春を待つ御池付近  まったりとした時間を過ごしたが,いつしか下山の時刻となる。帰りはトレースもあるので,三々五々それぞれのペースで下り始めた。kazuさんご夫妻の待つ場所まで降り,見えそうで見えない燧ヶ岳の山頂が姿を現すのを待ち続けたが,雲がとれる気配もないので下山することにした。森の中を歩いていると待望の燧ヶ岳の山頂がその姿を現した。やっと姿を見せてくれたか・・・。待ちに待った瞬間にぼくらは夢中でカメラを構えた。写真的には平凡だけれど,なかなか見ることのできない風景をカメラに納めることが出来て,みんな満足そうだ。思い残すこともなくなったので先を急ぐ。でも,決められたルートを歩くのは面白くない。ぼくらは新しい雪の感触を味わいながら,トレースのない斜面をゆっくりと御池に下った。

雪に埋もれる案内板  上田代コースの人たちはほとんど下山したようで,大杉岳コースの一部の人が御池付近でのんびりしていた。ぼくらはそこでスノーモビルが来るのを待つことにした。スノーモビルが来るまでの20分ぐらいの時間。青く澄み渡った空の下,真っ白な燧ヶ岳を眺めながら穏やかに流れる時間をのんびりと味わった。
 そして,スノーモビルにまたがり猛スピードで檜枝岐を目指した。帰りは加速度も付くので,朝の時よりスリリングだ。スノーモビル。なんか病みつきになりそう・・・。帰りにてばまるさんやkazuさんたちと燧の湯に立ち寄ってから帰路についた。今回kazuさんご夫妻と知り合い,てばまるさんたちと楽しい時間を共有し,山びこ山荘の美味しい料理とご主人の温かい人柄に触れるなどいい思い出がたくさん出来た。

【コース・時間】
中土合公園(9:00)〜御池(10:00〜10:40)〜大杉岳直下(11:00〜12:00)〜御池(13:00〜13:30)〜ミニ尾瀬公園(14:20)