尾瀬には直面する問題がいくつかあります。その中で一番深刻なのがオーバーユースによる問題です。昨年は年間で61万人もの人が尾瀬を訪れました。しかもミズバショウ,ニッコウキスゲ,紅葉のシーズンの土日に集中しています。これによって引き起こされるのがゴミ処理,水質汚染,移入動植物,植生の破壊,違法駐車の問題です。こうした問題に対処するためゴミ持ち帰り運動,浄化槽の設置,風呂休止日の設定,木道の複線化,マイカー規制,平日利用の呼びかけなどを行っていますが,あくまでも対処療法でしかありません。 国立公園の管理運営も入山者追随の感が否めません。入山者が増えたので大駐車場を作る,大木で解説板を作り,湿原を掘り起こして埋める,軽装でも入山できるよう登山道・木道を整備するなど訪れる人の都合に目を向け,開発中心の管理を行ってきたように思われます。また,マイカー規制に関しても,地元や観光業者の利益ばかりを追求するあまり本質的な解決策になっていないようです。マイカーがバスに代わっても入山者数が変わらなければ何も解決しないのです。入山者も「自然を自然のまま見る」という国立公園の原点に立ち返り,自然を人間に合わせるのではなく,人間が自然に合わせ不便なものもそのまま受け入れることも必要なのだと思います。
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