Oze News

◇尾瀬NEWS

○「ふろ休止日」撤廃へ
(2000.11.27)
 尾瀬の山小屋組合は(角田勇組合長,21軒)は,宿泊者が多い土曜日に1シーズン10日間設けていた「ふろ休止日」を来シーズンから撤廃する。合併浄化槽の整備が進み、湿原の水質汚染の心配がなくなったことなども背景にあるが,サービス向上でここ数年の入山屋の現象に歯止めをかけたいとの期待もありそうだ。
 山小屋の風呂やトイレで使用された生活雑排水やし尿は,水質汚染や富栄養化による植生変化を招く恐れがあると自然保護団体から指摘され,組合加盟のy山小屋では,1990年から,5〜10月のシーズン中,15日間の「ふろ休止日」を設定,宿泊客がい多い土曜日には入浴サービスを自粛してきた。
 その後,環境対策のため,各山小屋では浄化槽をし尿のみを処理する「単純式」から,生活雑排水も処理できる「合併式」への転換を進め,95年に転換が終わり,処理能力も大幅にアップした。ふろの連続使用も可能になったが,組合内部で「自然保護の意識を入山者に持ってもらうためにも,『ふろ休止日』の撤廃は時期尚早だ」との意見が大勢を占めたため,95年以降も1シーズン10日の「ふろ休止日」を続けてきた。
 しかし,山小屋の宿泊客数がここ数年減少する中で,中高年女性が多数を占める宿泊客から,ふろの「全面解禁」を求める声が毎年多く寄せられ,今月16日の組合総会で休止日撤廃を決めた。
 これに対し,長年,民間の立場から尾瀬の保護運動に取り組んできた元「尾瀬の自然を守る会」代表の内海広重・奥利根自然センター所長(群馬県月夜野町)は,「山小屋の『旅館化』がいっそう進み,本来の自然を守る山小屋の姿から遠ざかっている」と批判している。
 環境庁などによると,尾瀬の入山者数は96年の約65万人をピークに年々減り,99年には42万5千人になった。このため,山小屋の宿泊客数も減少している。(読売新聞)

○尾瀬のシカ,来冬から駆除
(2000.02.05)
 尾瀬でシカによる食害が深刻化していることを受け,環境庁は「尾瀬シカ問題説明会」を開き,「時間がたつほど被害は拡大する。シカの数を減らすことが必要で,次の冬から,周囲の越冬地で狩猟の奨励などをしたい。」「自然の推移に任せるという従来の方向から,急ハンドルを切らざるをえない。」と述べ,同庁として初めてシカの駆除に乗り出す方針を明確に示した。関係県の協力も得て,シカの越冬地を中心に駆除を進める方針だ。尾瀬のシカ対策については,自然保護関係者の間で駆除を求める声と慎重にすべきだとの声が出ている。
 尾瀬は豪雪地のため,かつてはシカはいないとされてきたが,宇都宮大農学部の小金沢正昭助教授らのグループが1997年に生息を確認。同助教授の推定によると,97年の最も多い時期で135頭だったのが,99年には最大238頭に増えたという。また,東北大理学部の内藤俊彦助手らの調査では,尾瀬のほぼ全域でミズバショウやミツガシワなどの湿原植物がシカに食べられ,湿原が踏みつけられて裸地化,池の縁が壊されて決壊する,といった被害が広がっている。シカは冬場は尾瀬の南側の群馬,栃木県側で越冬している。最近は積雪の減少により,越冬地が尾瀬の近くまで拡大。冬が終わると湿原に入り込むようになったとみられている。

○尾瀬への入山者,調査開始以来最低
(2000.01.17)
 昨年,尾瀬地域を訪れた入山者は42万5807人で,1989年に調査を始めて以来,最も少なかったことが,環境庁のまとめでわかった。96年の約64万8000人をピークに減り続け,昨年は前年より6.5%少なかった。入山者が減った理由について,環境庁自然保護局は「マイカー規制の効果が出てきた一方で,景気低迷のために減ったのではないか」としている。
 ミズバショウや紅葉などを楽しめる毎年5月から10月にかけては,週末を中心に入山口の鳩待峠(群馬県)や沼山峠(福島県)へのマイカー乗り入れを規制。昨年は新たに群馬,福島両県が観光バスなどの規制日も設けていた。 しかし,入山者が減ったことから,今年はこれまでの観光バスによる入山に対する規制を,群馬県,福島県とも減らす方針だ。

○数十年ぶり,ワタスゲの大豊作
(1999.06.26)
ワタスゲ大群落  日光国立公園の尾瀬ヶ原で,ワタスゲが大繁殖,湿原は真っ白なじゅうたんを広げたようだ。カヤツリ グサ科のワタスゲは,5月に黄色い花を咲かせ,六月に白い球形の綿毛(穂)を膨らませる。初夏を迎え た湿原のあちこちで,40センチほどの茎の先に直径約二センチの綿毛を広げ,風にそよぐ姿がハイカー の目を楽しませている。
 今年は,尾瀬ヶ原内の山ノ鼻や赤田代など,これまでワタスゲが少なかった地区でも群生しており,尾 瀬山ノ鼻ビジターセンターの鶴渕一三所長は「30年以上尾瀬で働いているが,こんなにワタスゲが繁殖 しているのは初めて」という。ここ2,3日が一番の見ごろで,今月末ごろまで楽しめる。

○尾瀬にクマ,ハイカー重傷
(「読売新聞」1999.06.07)
 6日午前7時40分ごろ新潟県湯之谷村の日光国立公園・尾瀬ヶ原で青森県の会社員Tさん(41)とその妻Mさん(40)が木道を歩いていたところ,体長1.5mほどのツキノワグマが近づき,いきなり二人に襲いかかった。二人は約200m離れた山小屋「東電小屋」に逃げ込んで救助を求め,群馬県警のヘリコプターで同県沼田市内の病院に運ばれたが,それぞれかまれたり,つめでひっかかれたりしており,Tさんが右腕骨折で2ヶ月,Mさんも腕に1ヶ月の重傷。
クマ出没注意  同県警の調べによると,現場は,新潟県側の東電小屋からヨッピ吊り橋に向かう湿原上の木道。夫妻は,木道から約100m南の川の近くにクマがいるのを見つけ,「むやみに動くと危険」とじっとしていたが,クマはそのままかなりのスピードで走ってきて襲いかかり,北側の山中に逃げ去ったという。体長などから成獣と見られる。夫妻から前後50mほどの木道にも別のハイカーがいたが,無事だった。
 尾瀬ヶ原は今月中旬ごろまでがミズバショウの最盛期で,この日は約七千人が湿原を訪れていた。
 この事故を受け,尾瀬ヶ原の木道などを管理している民間会社・尾瀬林業は,猟友会などにクマの駆除を要請するとともに,現場やヨッピ吊り橋周辺に急きょ注意を呼びかける看板を設置。福島,新潟両県の入山口にも張り紙などが掲示された。現在のところ,入山規制などの動きはでていない。
 尾瀬ヶ原では毎年数回クマの目撃情報があり,今年も既に5件が寄せられている。しかし,一般的にはツキノワグマは,子連れの時などを除いてめったに人を襲うことはないとされており,福島県の尾瀬沼畔にある環境庁のビジターセンターでは「尾瀬ヶ原でクマが人間を襲ったという話は聞いたことがない」と話している。(写真はクマの目撃情報が多く寄せられ,尾瀬ヶ原に立てられた看板)
 尾瀬ヶ原は気軽なハイキングコースのイメージが強いだけに,ハイカーたちも今回の事故に一様に驚いた様子。山の鼻ビジターセンターを訪れた横浜市の会社経営の男性(66)は,「ツアー旅行で来て,夫婦で単独行動しようと思ったが,添乗員から『クマが出たので団体で行動してください』と言われ,ずっと18人で一緒に動いた」と話していた。 (有馬注:クマにあわない方法やGOODSを紹介す るHPはこちら)

○ミニ尾瀬公園 OPEN
(1999.05.14)
 福島県檜枝岐村が総工費4億3000万円をかけて作成した「ミニ尾瀬公園」が5月13日正式オープン した。ここには尾瀬で見られる植物を70種10万株の高山植物を高山草原エリア,高層湿原エリアに分け て植え,四季を通じて楽しめるよう工夫してある。1周2kmの園内は檜枝岐川から流れ込む小川や木道が あり,障害のある方や車椅子のお年寄りの方でも,4月末から10月末まで尾瀬の雰囲気が楽しめるよう配 慮されている。
管理棟には,明治時代尾瀬を広く紹介した武田久吉氏のメモリアルホールもある。

○至仏山の入山規制について
(1998.03.28)
 昨年度の至仏山登山道の再開にともなって,平成10年度以降毎年,山の鼻から鳩待峠に至る至仏山登山道を残雪期の5月11日から6月30日までの間,閉鎖することが決まった。
 これは,残雪により登山道が不明確となって貴重な湿原への踏み込みを防ぐのが主な目的だが,遭難防止の意味合いもあるということである。閉鎖期間については,その年の残雪の状況によって変更されることもある。(追加情報:今年は融雪が早いため6月27日から利用可能になった。)

○ゴミの焼却について
(1998.03.26)
 尾瀬山小屋組合は,社会問題化しているゴミの焼却に伴うダイオキシンの発生を防ぐため,尾瀬の地域内で行っていたビニル系のゴミの焼却を今年度から中止することを決めた。
 これらのゴミはヘリコプターなどによって山からおろすことになるということである。

○ヒラリー卿と語る 〜 高校生が国際フォーラム 〜
(「読売新聞」1997.08.29)
 大自然の中で,青少年が山岳環境保全のあり方などを語り合う「青少年国際フォーラム」がこのほど,世界初のエヴェレスト登頂者エドモント・ヒラリー卿(78)を招いて尾瀬で開かれた。中国,ネパールなど,アジアを中心に参加した11の国と地域の高校生が80人が,尾瀬ヶ原を歩いて尾瀬沼に集結。卿の言葉に耳を傾け,今後の姿勢を熱く語った。

 開け放った窓からさわやかな風が入り,タテハチョウが迷い込む。いつもは登山者がとまる長蔵小屋の古い別館の畳敷きの大部屋に,23日午後はティーンエイジャーがぎっしり。
 登山家の田部井淳子さんが代表を務める山岳自然保護団体「日本ヒマラヤン・アドベンチャー・トラスト(HAT−J)」がアジア・太平洋地域の各国から招待した山好きの若者と,「私と自然」をテーマに作文を寄せてきた日本人高校生だ。膝を抱くように座って,大柄な白人男性の声に熱心に耳を傾ける
 「あの人がヒラリーさん。本で読んだことがあったけど会えるなんて」。尊敬のまなざしの中で卿は「20世紀は輝かしい科学技術の時代だったが,同時に自然破壊の時期でもあった」と指摘。そして,「私たちはできることから努力しよう。地球環境の将来はここにいるみなさんの手にある。一人一人が責任を持って正しい決定をしてほしい」と呼びかけた。
 続いて長蔵小屋の四代目主人,平野紀子さんが,尾瀬のダムや観光道路計画に,歴代の経営者が反対運動を繰り広げてきた歴史を説明。環境庁北関東地区国立公園・野生生物事務所長の先名征司さんは,短い期間に観光客が集中することが様々な環境問題を引き起こしていると報告した。
 高校生は日本人も含めてほとんどが尾瀬を訪れたのは初めて。関係者の生の声に「尾瀬をモデルにもっと自然環境にについて考え,周囲のみんなに伝えたい」と思い始めたようだ。   (途中省略)
フォーラムでは最後に,世界の美しい山岳自然を21世紀に残すために努力することを誓った「尾瀬宣言」を採択。ヒラリー卿は「宣言の精神が世界の若者に広がっていくことを願ってやまない」と付け加えた。
 山小屋で開かれた珍しい国際フォーラム。参加の青少年は,汗をかいて自分の足で集まっただけに「山の自然って本当に大切」と実感した様子。老アルピニストの思いはしっかり次世代にバトンタッチされたようだ。


尾瀬ヶ原俯瞰
○至仏山直登ルート今夏再開
(「読売新聞」1997.03.22)
 日光国立公園・尾瀬の貴重な高山植物の宝庫として知られる至仏山で裸地化による荒廃を復元するため閉鎖されていた直登ルート「東面登山道」について,環境庁や群馬,福島,新潟県と地元三村で構成する「尾瀬地区保全対策推進連絡協議会」の幹事会は21日,今夏をめどに9シーズンぶりにルートを再開することを決めた。
 今後の植生保護や再開後の登山道の安全対策などについては未定で,来月中に開催予定の同連絡協議会でさらに具体策を協議し,再開を正式決定する。
 地元の尾瀬山小屋組合などは早期再開を要望しているが,自然保護関係者からは慎重論が出ている。
(写真左は至仏山から見た尾瀬ヶ原)



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