○至仏山の生態

至仏山 ○至仏山の植物
 尾瀬の他の山地が火山であるのに対し,至仏山は古い地層の隆起・浸食によってできた山です。中腹より上には,2億年以上昔にできた暗緑色の蛇紋岩が露出しています。
 この蛇紋岩の内部からは,植物の生育に不適なマグネシウム成分が出ているため植物が育ちにくくなっています。そのため,燧ヶ岳の森林限界が標高2200mなのに対し,至仏山では1700mとかなり低くなっています。しかし,これより上部の厳しい環境の中でも,ハイマツ・ミヤマナラなどの樹木や多くの高山植物が生育しています。氷河期が終わって気候が温暖化するにしたがって高緯度・高標高の場所に追いやられたオゼソウ,カトウハコベ,チシマアマナといった氷河期残存植物のほか,多くの北方系寒地植物も生育しています。また,ホソバヒナウスユキソウ・シブツアサツキ・ジョウシュウアズマギクなどの蛇紋岩変形植物も見られます。
(写真上:至仏山)

○至仏山の動物
 至仏山は,垂直的に気象が変化しているので,ブナ林から森林限界山頂付近の岩礫地と植生の変化にともなって昆虫類,鳥類,ほ乳類も住みわけています。 野鳥類はブナ林ではコガラ・コマドリ,オオシラビソ林ではウソ・キビタキ・オオルリ・ミソサザイ,山頂付近の岩礫地には,高山性のイワヒバリやカヤクグリが見られます。 昆虫類では,お花畑や林の開けたところに,キベリタテハ・ベニヒカゲといった高山性のチョウが見られます。

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