尾瀬には約700種類の植物が生育しています。種類はあまり多くはありませんが,多様な生態系があるためバラエティに富んでいます。これらの植物の大半は寒冷地で見られるものが多く,尾瀬以南には見られない「南限種」も多数見られます。また,現在では高山や高緯度地方にしか見られないオゼソウなどの「氷河期残存植物」もあります。 さらに,至仏山は植物の生育に不適な蛇紋岩の特徴的な地質のため,ホソバヒナウスユキソウやシブツアサツキなどの珍しい植物が多数生育しています。 湿原にも,オゼヌマアザミなど尾瀬でしか見られない特産種があります。 水辺や水中には,根が水中にあって葉を水面に浮かべる「浮葉植物」(ヒツジグサ・オゼコウホネ),根だけ水中にあって大半を空中に出ている「抽水植物」(フトイ・ミツガシワ),全体が水中に没している「沈水植物」(ササエビモ・コタヌキモ)などの水生植物が生育しています。 尾瀬の周辺部には,太古から続いてきた原生林があります。これは,構成種の遷移が終わっており「極相林」と呼ばれています。この森林を形成しているのは,ブナ,オオシラビソなどで標高によって森林の構成種が違っています。これらの森林は水を豊富に蓄え,尾瀬に欠かせない水を供給しています。 |